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「『6月の雨』と『椰子の実』」(コラム#011)

 異国の見知らぬ方が、自分のバンドが大昔レコーディングした曲を、YouTubeにアップしてくれているのをたまたま発見した。童謡『椰子の実』では、椰子の実が遠い島から流れ着いたことを歌っているが、今回のことは、グローバリゼーション、インターネットの時代ならではのご縁だと感じた。(ソーシャル・コモンズ代表 竹本治)

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 梅雨真っ最中ということで、「6月の雨」にまつわる(?)話題をひとつ。


名も知らぬ 遠き島より

流れ寄る 椰子の実一つ


 「道楽」としてバンド活動をしていることは、以前にも書いた。先日、たまたまインターネット上で自分のバンドのYouTube映像を検索していたところ、代わりに、見ず知らずの人のYouTubeチャンネルがヒットした。見覚えのあるCDジャケットとともに『June Rain』(原題:『6月の雨』、CD『20世紀の記憶』収録)という自作のインストゥルメンタル曲が掲載されている。大変驚いたが、同時にとてもうれしくもあった。


 英語圏に住むと思われるその方は、名もないバンドのCDやレコードを買っては、気に入った曲をYouTubeにアップしているらしい。早速、コメント欄を使って聞いてみたところ、欧州の中古CDショップで見つけた、とのことであった。無名の日本のアマチュアバンドが20年以上も前に作った自主製作CD(市販もしていないもの)が、はるか異国で売られていたというのも、まずもって不思議である。そして、それを買って、楽曲をYouTubeにわざわざアップまでしてくれた人がいたわけで、このご縁には感謝するしかない。そしてその奇特な方と、ネット上だが(したがって、顔も本名も知らない)、その音源の作者である自分がやりとりできたわけである。ネット時代ならではの幸運である。


 椰子の実よ、故郷の岸をはなれて、おまえはいったい何ヶ月の間波に流されてきたのか。


 『椰子の実』(作詞:島崎藤村、作曲:大中 寅二)は、たまたまNHK朝ドラ「ちむどんどん」の主題歌にもなっているが、「ちむどんどん」とは、沖縄の方言で「胸がワクワクすること」という意味らしい。自分も、名も知らぬ遠き国の人のお蔭で、そんな楽しい経験をさせていただいた。


 最近は、過度なグローバリゼーションやネット社会がもたらす弊害も多いと言われているが、こうした名もなき国際交流が思いがけず実現する時代になったのは、大変有難いことである。

(6月23日、沖縄慰霊の日に)

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