いわゆる「和」の文化は、国内ばかりでなく海外の人からも人気である。京都を久しぶりに訪れてみたが、豊かな「コンテンツ」というものは、繊細な季節感、材料や色遣いなどの様々な美意識と、歴史とが複雑に織り上がって出来上がっていることを改めて実感する。(ソーシャル・コモンズ代表 竹本治)
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今夏は、法事の帰りに、数年ぶりに京都に立ち寄る機会があった。国内観光客の数はかなり戻ってきたとのことであったが、新型コロナの影響でインバウンドの人は非常に少なく、数年前と比べれば、かなり静かな街並みであった。
京都の夏は暑い。しかし、清水寺では、千日参りの風鈴がそこかしこで鳴っていて、天龍寺に行けば、蓮の葉が見事であった。そして、大文字の送り火が夏の終わりを告げる。令和の時代にあっても、宗教行事とまちの歴史を活かしながら、古都全体が「夏」を演出しているのである。
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昔ながらの料亭に入れば、部屋は涼し気に簀戸(すど)で仕切られている。さすがに空調はかかっているが、エアコンが直接見えないように隠してある。よくみると、しつらい全部が、木・紙・竹、あるいは綿や絹といった自然素材で出来ており、照明器具、コンセントやコードといったプラスチック製品が見えないように工夫してある。ちょっとした調度品をみても、「和」に調和するような美意識が見え隠れしている。
そして、係の方は、当然ながら着物姿でテキパキと働いていて、現代陶芸作家の作った和食器とともに、季節感ある食材を使った和食が出てくる。最後の甘味は、蓮の葉の上にのせられ、朝露にみたてて霧吹きでひとふきかけてある。
和菓子は、元々好きである。しかし、まちを挙げて、ここまで「夏×和」で徹底的に演出されると、水菓子の味も格別のものとなる。「和」の文化を、多面的な要素で「織り上げている」のが古都の魅力であるということを実感した夏であった。
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立ち寄った古陶の店の主人に話をきけば、日本人は、古いものを愛でることがとても好きな国民だとのことである。若い時分にはよくわからなかったが、国内にこれだけの豊かなコンテンツがあれば、好事家でなくても「昔からのもの」「和のもの」に親しむ機会は自然に多くなる。
「陶芸は主観や。ただの土くれでしかないのを、自分がいいと思うかどうかなんや!」という、この夏久しぶりに会った松山在住の友人の言葉を思い出して、妙に納得する。
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「イベントで、まちおこしをしよう」とか「わが町でも、何か観光資源を作るべきだ」とか、よく言われる。「コンテンツ」には、まずはコアとなるものは必要である。しかし、それ単独で成り立つものでは決してない。細々とした風物、色遣い・季節感といった美意識、あるいは歴史やストーリー等がうまく組み合わさってこそ、魅力が倍加するものなのであろう。
それは一朝一夕にできるものでは全くない。しかし、古都で数日過ごすと、意識的かどうかを問わず、「多面的な要素」を積極的に組み合わせることがとても大事であることが、よく分かる。
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考えてみれば、ディズニーランドやスターウォーズの「コンテンツ」も、そういった多様な要素を兼ね備えている。だからこそ、長い間、高い人気を誇っているのであろう。
京都にまた行こう。そして、雨が降ったら、番傘をさすのである(ほんまかいな)。