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「スキ、ブキ、ツキとトキ~『飲茶型の人生』のススメ~」(コラム#012)

 そこそこ展開の定まった「コース料理」「定食型」の人生ではなく、「小皿料理」を思い思いのタイミングで注文し、その組合せを変えていくような「飲茶型」の人生。これからの若い方には、「スキ(好き)」「ブキ(武器)」「ツキ(運、縁)」と「トキ(時代)」をうまく組み合わせて、彩り多い、自分なりに納得できる人生を過ごしていってほしい(学習院女子大学における講義より)。(ソーシャル・コモンズ代表 竹本)


《写真提供:学習院女子大学》  



先日、学習院女子大学の金城亜紀教授のはからいで、同大学の特別総合科目Ⅲ(国際企業)のゲスト講師として、大勢の学生にお話しする機会をいただいた。コロナ感染に留意して、大きな講堂の中で、学生同志は離れて着席するという具合であったが、リアルの場で、若い方々に直接語り掛けることのできる貴重な時間となった(一部の学生はオンラインで参加)。


 講義の後半では、『飲茶型の人生』といったキーワードなどを使って、若い方が『人生100年時代』の中で充実したキャリアや人生を展開していく上でのヒントについて述べた。以下、概略を紹介したい。


《「飲茶型の人生」》

これまでの日本(「昭和モデル」)では、学び(前菜)を終えたら、そこそこ定まった職場で働くこと(主菜)が数十年続き、定年・余生(デザート)を迎えるというように、どの人生もある程度似た方向で物事が進むことがイメージされていた。サラリーマンの場合には、メインディッシュの種類はそれぞれ違っても、ある程度展開の定まった、いわば「コース料理」「定食型の人生」が中心であったといえる。

これに対し、これからの日本(「令和モデル」)では、もっと人生の選択肢を増やし、自由度を高め、一人ひとりがさらに充実した時間を過ごしていくことが大事となる。自分はそうした新たな人生モデルを、「飲茶型」と呼んでいる。勉学、仕事、子育てなどの「小皿料理」を、思い思いのタイミングで注文し、行きつ戻りつしながら、徐々にその組合せを変えていくことで、彩り多い人生を自分好みに設計していく、というイメージである。



《「スキ」「ブキ」「ツキ」と「トキ」》

「自分好みの人生」というが、どんな要素を充実させたいかは、もちろん人によって異なる。性格・興味や、大切にしている価値観――「スキ(好き)」――を言語化し、日頃から意識していくことは重要である。

そして、その価値観を活かしながら、自分の能力・特質――「ブキ(武器)」――を伸長させていくことを考えることになる。これは仕事でいえば、自分の強みとかスキルといったことになるが、それ以外の活動でも、自分の持ち味はそれぞれに出せるものである。

若い方は、「自分が何をしたいか分からない」「自分の強みはさしてない」といったように悩みがちかもしれない。しかし、「スキ」も「ブキ」も、成長や経験とともに変化していくものである。いま決め打つ必要は全くない。自分の大切とする価値観、強みのいずれも、長い人生の中でブレてしまって全く構わない。関心事は、どんどん変わっていって良い。むしろ、色々な経験をする中で、自分が大事にしているものはどんどん変わっていく方が普通である。

実際、仕事などでは、ある時、たまたま与えられた業務分野について、やってみると結構面白くて、それが「スキ」な分野となって、結果的に「ブキ」にもなって、その後の自分のキャリアがそれを中心に展開していくといったことは、多くの社会人が経験している。


また、「ツキ(運、縁)」もとても大事である。殆どの方の人生では、何か一つのことをやりぬくということはないと思ってよい。逆に、転機は沢山あるし、自然にいくつかの節目が訪れるものである。それは、目の前の仕事に疑問をもつとか、生活面で何か行き詰るといったことかもしれない。そうしたときにこそ、色々な友人・知人・先輩や家族の助けや巡りあわせ――「ツキ」――をきっかけに方向転換していけばよい。


 最後は「トキ(時)」である。この地球上で生活する場所は変えられるとしても、生まれた時代を選ぶことは出来ない。今生きているこの時代(「トキ」)の中で、自分の「スキ」「ブキ」「ツキ」を活かして、最適解を探していく、ということになる。

若い皆さんには、この4つのキーワード「スキ」「ブキ」「ツキ」と「トキ」をうまく組み合わせて、自分なりに納得できる「飲茶型の人生」を過ごしていってほしい。

《「トキ」は選べないが、徐々に変えていくことができる》

 たしかに「トキ」は選べない。しかし時代は、変わっていくものであるし、われわれの責任で徐々に変えていくべきものでもある。日本社会が直面している課題を積極的に打破し、変革していかないと、明るい将来は得られない。

 そのためには、大学で研鑽を積むとともに、自分自身を今の学生という役割に固定せず、学外でも幅広い活動を同時並行的にすすめていってほしい。柔軟な心をもって、仲間と協力しながら、「境目」をこえて活動する人が増えていけば、日本は少しでも暮らしやすくなっていくはずである。

 また、若者にとって暮らしやすい社会にしていくためには、是非、政治にも関心をもって、自分たちの思いを積極的に反映させていってほしい。

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 若い方が学びやこれからの人生を考えていくにあたって、今回お話したことが少しでも参考になったのであれば本当に嬉しい。


(参議院議員選挙の日に)



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