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不祥事の多発に思うこと(コラム#030)

組織的・意図的に行われていた組織の不祥事が昨今目立つが、これを減らすためには、①不祥事が明らかになった際に、社会がこれを厳しく制裁すること、②内部者がものを言いやすい環境を作ること、③外部の目をしっかり働かせること、といった常識的なことがやはり重要となろう。(ソーシャル・コモンズ代表 竹本治)

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最近のニュースをみると、わが国では不祥事がいろいろな業界・組織で起こっていて、しかも多発しているように感じる。昔の方が良かった、ということではなくて、きっと今も昔も変わらないのであろうが、それにしても情けない事件が多い。


専門家でもない部外者が印象論で語っても詮ないが、昨今の報道を見聞きして思うことを述べてみたい。



「不祥事」には、公務員や社員など個人が引き起こした事件・事故なども通常入るが、ここで筆者が取り上げたいのは、「長年に亘り行われていた」、「大勢の関係者がかかわり、組織的・意図的に行われていた」、「隠蔽されていた、見逃されていた」といった類の不祥事である。




そういった組織的・意図的な不祥事の中で、一番今話題になっているのは、政治資金収支報告書の不記載、あるいは、エンジンの認証手続きに関する不正だろうか。そのほかにも、記憶に新しいところでも、自動車ディーラーの保険金水増し請求、芸能事務所での長年にわたる性加害の表面化など、枚挙にいとまがない。




それら「不祥事」をひとくくりにするのは、いささか乱暴ではあるが、特徴をみると、(1)(特に上層部において)順法精神が薄く、目先の利益やメリットの方を重視してしまう、(2)ワンマン体制あるいは外部組織との力関係から、組織内の風通しが悪く、内部者が過ちに気づいたとしても、言い出せない、あるいは黙殺される、そして(3)外部のチェックが働きにくい、といった要因が背景にあるようにうかがわれる。これらが絡み合って、酷い状況が長年に亘って是正されなかったのであろう。



また、不祥事が表沙汰になったあとの展開をみると、さらに隠蔽しようとしたり、責任を部下に擦り付けたりして、傷口を一層広げるケースも目立つ。自業自得といえばそれまでであるが、そうした悪手を打ってしまうのは、世間常識とかけ離れたセンスで組織運営をしていたことを象徴的に示すものといえる。



不祥事が起きるリスクは、程度の差こそあれ、実はどんな組織でも有している。しかし、多くの組織では、「自浄作用」が働くことで、大事に至らないうちに解決されているといえる。


では、問題を抱え続ける数少ない組織(と期待したいが、水面下では相当数あるのかもしれない)が、自己改革をしていくにはどうしたらよいのか。



まず、(1)他の組織の不祥事を「他山の石」とすることである。組織的・意図的に行われていた不祥事の顛末をみれば明らかであるが、世間は全く甘くない。多くの場合、組織の解体ないし解体的出直し、幹部の一掃(逮捕・引責辞任を含む)といった法的・社会的制裁が強く課されている。そのような破滅的な結末をもたらすリスクを背負ってまで組織が目先の利益を追求することは、通常であれば合理的なものとならないはずである。


次に、(2)「心理的な安全性」の確保である。組織人の多くは、常識的な社会人であって、本来、不正や不適切な対応には加担したくないはずである。内部の事情を知る社員や関係者が健全なかたちでブレーキ役を果たせるようにするためには、おかしいと思ったときに自由に物を言いやすい環境を作っていくことが極めて大事である。

閉鎖的な組織であればあるほど、世間常識と異なる悪弊が温存されがちとなる。人員の適切な入れ替えがあれば、その組織文化に染まっていない外部者が入ってくる。逆説的であるが、現役社員も、その組織をいつやめてもよいと思っているくらいの方が、組織を良くするための発言も思い切って言えるであろう。


そして、(3)多種多様な「外部の目」を意識することである。株主や顧客などはもちろんのこと、監督当局、マスコミ等々色々な立場の人がしっかりみることが重要で、組織の側も、常にチェックされているという緊張感があれば、長年に亘って、誤った対応を続けることはさすがに難しくなる。



残念ながら、我々一般市民は、不祥事が発覚してからしか対応できないことが多い。それでも、いったんそれが明らかになった際には、常識的な目線で事案の善悪を判断し、市場・世論の力で強い制裁を与えることはできる。そして、その組織等が本気で「解体的な出直し」を完了するまで、忘れずに事案をフォローする、ということも重要である。なあなあに終わらせることを許していては、組織の体質は変わらず、また似たような過ちをしかねない。


目下話題になっている、政治家集団や企業・団体それぞれが、どのような「解体的出直し」をしていくのか、注視していきたい。

 

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